医大生Kのブログ

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ハーバード移植外科教授、河合達郎先生のインタビュー記事を公開します!


ハーバード大学の基幹病院で世界的にも有名なボストンのMGHに取材に行ってきました。


移植外科医として臨床と研究の両方をこなし、ハーバード医学部の外科教授でもある河合先生は、落ち着いた雰囲気で、とても暖かい雰囲気を持たれている方でした。


後進教育にも熱心で、日本の医学部から来た学生の実習も積極的に受け入れられていました。

今回は「臓器移植」に関してインタビュー以外にもたくさんのお話しをさせていただきました。

年間およそ2万5000件も移植が行われるアメリカに対し、日本は年間およそ300件程度に留まり、待機中に亡くなってしまった患者さんは6518人にのぼります。(1995年~2018年7月31日、臓器移植ネットワーク登録者)

1968年の和田事件以降の移植医療に対する強い不信感から長い停滞期を経て、1997年に臓器移植法が施行されてからも、その件数は少ないままで、そのなかでも特に6歳未満の子供からの提供が少ないのが現状です。

そして、日本で移植医療が受けられない場合、海外渡航して移植医療を受けるという選択肢がありますが、医療保険がないのでその費用は莫大なものになってしまいます。


受け入れ先の米国からは、自国で移植を行わない日本に対して批判もあります。


2008年の国際移植学会では「移植が必要な患者の命は自国で救える努力をすること」というイスタンブール宣言も採択され、海外での臓器移植はますます厳しくなってきています。

日本の移植医療の問題は死生観や法整備で語られがちですが、河合先生は全国の病院の体制整備や移植コーディネーターの不足、移植専門の内科医の必要性を語られていました。


国はリーダーシップを発揮し、それを推進するインセンティブ構造を作れるかが重要なポイントだと感じました。


アメリカや韓国など参考にできる例は多いのではないでしょうか。

手術後に、患者のドナーでもあるお父さんが、泣きながら河合先生に感謝していたシーンはとても印象的でしたが、健康な人の身体にメスを入れるという事に複雑な思いも抱きました。

このような文脈から、ドナーの不足という点に関し、個人的にはヒトの臓器を作るように遺伝子に改変を加えたサルやブタから作成した臓器を用いて、臓器移植を行うゼノグラフトに可能性を感じました。

実際にボストンには「e-Genesis」というゼノグラフトを用いた移植の実現を目指すベンチャー企業ハーバード大学の医学部のジョージ・チャーチ氏によって創業され、CRISPR/Cas9でブタのゲノムに組み込まれていて移植後感染症が危惧されていたPERV (Porcine endogenous retrovirus) をノックアウトしたブタの作製に成功しています。

現在、30億ドルの資金調達を得て、MGHと共同で臨床試験を目指しています。

一刻も早く1人でも多くの命を救うために、臨床現場だけでなく色んなステークホルダーを交えた議論を活発化していく事が重要だと感じました。


インタビュー記事本編は以下からどうぞ!
https://catalyst-med.work/2018/12/10/「情熱を失わないこと」前編/