医大生Kのブログ

CATALYSTという医大生向けWebを運営する医学生が書くアウトプットのためのブログです!大衆受けしないニッチな内容ですが少しでも自分の経験をシェアする事で誰かのお役に立てれば幸いです。

次にくる最新がん治療:カーティー療法とは?

 

 

こんにちわ!!

 

 

近年、がん治療において外科治療、化学療法、放射線療法につづく第4の治療として免疫療法が注目されていますが、

 

最近の腫瘍免疫学で最もHOTな話題であるカーティー療法について本日はぜひご紹介したいと思います。

 

●カーティーってなに??

 

カーティー療法はCAR-T therapy: Chimeric Antigen Receptor T cell therapyを表しており、日本語にするとキメラ抗原受容体T細胞療法となります。

 

T細胞は白血球の一種で、私たちの体で免疫機構のひとつとして働いており、細菌や

ウイルスに感染した細胞、がん細胞を攻撃する役割をもっています。

 

しかしながら、がん細胞は本来は私たちの細胞が様々な原因で異常をきたして発生するものであり、T細胞はがん細胞を攻撃対象として認識しづらいという側面があります。

 

また、ひとつのがん細胞を認識したとしてもがんはそれぞれが個性を持っていてなかなか全てを認識することは難しいのです。(heterogeneity)

 

今回のCAR-T療法ではそのような問題に対し、患者さんから集めて増やしたT細胞にがんを認識させるために遺伝子操作によってCARというキメラ抗原受容体を加えて患者さんに戻す事でT細胞にがんを認識するようにプログラムしています。

 

 

●どういったがんに効くの?

 

去年、FDAで治療薬キムリアが血液腫瘍の一部に対して承認されています。

日本も参加するELIANA試験では他の治療法がない、もしくは骨髄移植しかない患者さんの83%に効果を認めています。。

 

他の国際多施設共同臨床試験の結果でも血液系腫瘍にめちゃくちゃ効いていて販売元であるノバルティスは適応拡大の申請もしているようです。(JULIET試験)

 

是非興味がある方は臨床試験結果なども参照されて下さい

 

 

めちゃくちゃ効いてます。

 

 

●副作用はあるの??

 

血液系腫瘍で標的にしたCD19はがん細胞だけでなく正常細胞にも存在するので副作用は認めます。

 

呼吸困難、発熱、悪寒などが認められたようです。

 

 

●阪大や京大でも研究されている!?

 

阪大では多発性骨髄腫に対して腫瘍細胞に特異的に発現しているインテグリンβ7を標的にしたCAR-T療法が研究されており、医師主導治験に進む見込みです。

http://resou.osaka-u.ac.jp/ja/research/2017/20171107_3

 

京大はCAR-Tとは異なりますがiPS細胞からがんを殺傷する能力の高いT細胞を作り出すことに成功しています。

http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research/research_results/2016/161122_1.html

 

どちらもかなり有名なジャーナルに掲載されています。

 

●小野も参戦!!

 

かなり最近のニュースですが小野薬品がiPSを用いた創薬バイオベンチャーであるFate TherapeuticsとiPS細胞由来他家CAR-T療法に関する提携を結びました。

 

http://ir.fatetherapeutics.com/news-releases/news-release-details/fate-therapeutics-announces-shelf-car-t-cell-cancer

 

オプジーボで注目を集めた小野薬品ですが、腫瘍免疫関連での存在感を高めています。

 

 

●CAR-T療法は来年あたりに議論の的になる!!

 

CAR-T療法は治療効果以外にも注目を集めている側面があります。

 

実はノバルティスが承認申請を行ったキムリアは1回の治療でなんと、、、

 

 

 

約5300万円!!!!

 

 

 

小野のオプジーボが初め患者あたり約3000万とニュースにもなりかなり話題になりましたが、カーティー療法はそれを軽く超える金額がかかるのです!!

 

 

日本は国民皆保険制度や高額療養費制度があり、患者負担がそこまで莫大になることはないですが、

 

ただでさえ増え続けている社会保障負担にさらなる負担をかけることになるのは間違いないでしょう。

 

 

 

日本にいれば誰でも最新の治療が受けられる!?

 

 

しかし、実は医療費の増大は最新治療に国内に入ってくるまでに時間がかかるといったドラッグラグの問題や承認されても適応が制限されるといった問題も内包しており、目には見えづらい不利益を被っている場合もあります

 

 

製薬企業も個別化治療の発展によりなかなか製品化にかかるコストを回収できるだけの創薬が難しくなっている側面もあり、決して製薬会社が悪いという事ではありません。

 

近年、厚労省では薬価についてや医療の費用対効果測定などコストに関する意識も高くなってきています。

 

ひとりでも多くの患者さんを救うためには治療薬の開発だけでなく、持続可能な保険システムの再構築など、重厚長大化した医療の世界の中で考えなければならない事はもっと多いのではないか。

 

 

 

 

頭痛で昼寝してしまい寝れなくなった夜中にふと思い、アツくなりブログを書いてしまった秋の夜in Boston。

明日は朝からカンファあるのに、、、。